目次
1. 結論:まず今日やることは3つだけ
②前年の確定申告書を探す……あれば、どこから収入があった方かが一枚で分かります。
③年金・給与の源泉徴収票の取り寄せを始める……最も待たされる書類です。届いてから動くと間に合いません。
準確定申告とは、本来ご本人がするはずだった所得税の確定申告を、相続人が代わりに行う手続きです。その年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算して申告・納税します(国税庁タックスアンサーNo.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」)。以下は、期限から逆算した進め方です。
2. 【期限表】4ヶ月をどう使うか
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です(No.2022)。実務上、次の配分で進めると余裕が持てます。下の「いつまでに」は法律で決まった期限ではなく、当事務所が実際にご相談を受けるときの目安です。
| いつまでに | やること | ここでつまずく |
| 1週目 | 期限日を確定する/前年の確定申告書を探す | 「知った日」が死亡日と違うケース(疎遠だった等)は起算日がずれます |
| 2週目 | 相続人を確認し、誰が取りまとめるかを決める | 相続人が遠方にいると、署名を集めるだけで数週間かかります |
| 1ヶ月目 | 源泉徴収票・控除証明書の取り寄せを開始する | ここが最大の関門。年金の源泉徴収票は届くまで時間がかかります |
| 2ヶ月目 | 申告が必要かどうかを確定させる | 「たぶん要らない」で止めると、還付を取り逃すことがあります |
| 3ヶ月目 | 申告書を作成する | 提出先は亡くなった方の住所地の税務署。相続人の住所地ではありません |
| 3ヶ月半 | 相続人全員の署名を集める | 郵送でやり取りすると往復で2週間かかることがあります |
| 4ヶ月(期限) | 提出・納税、または還付を受ける | 納税も同じ日が期限です。提出だけ済ませても納付が遅れると延滞税がかかります |
この表を見て「もう1ヶ月以上経っている」という方も、まだ打つ手はあります。急ぐべき工程が変わるだけですので、残りの日数をお伝えいただければ、どこから手をつけるかを整理します。
3. そもそも自分は対象か(必要・不要・した方がお得)
準確定申告は、すべての方に必要な手続きではありません。生前に確定申告をする必要があった方は必要、というのが基本の考え方です。
| 区分 | 亡くなった方が、次のいずれかにあてはまるか |
| 必要 (義務) | ・個人で事業をしていた ・賃貸物件など不動産収入があった ・給与収入が2,000万円を超えていた ・2ヶ所以上から給与を受けていた ・公的年金等の収入が400万円を超えていた ・年金400万円以下でも、他の所得が20万円を超えていた ・土地・建物や株式を売却していた ・生命保険の満期金・一時金を受け取っていた |
| 不要 なことが多い | ・給与が1ヶ所のみで、勤務先で年末調整が済んでいる ・公的年金等の収入が400万円以下で、他の所得も20万円以下 |
| 義務ではないが した方がお得 | ・亡くなる前に高額な医療費を支払っていた(医療費控除) ・年の途中で亡くなったため、源泉徴収税額が納めすぎになっている ・配偶者控除・扶養控除・寄附金控除が使える |
4. 4ヶ月が足りなくなる原因は、書類を待っている時間
4ヶ月というと十分な長さに思えますが、実際に間に合わなくなる方の多くは、作業に時間がかかったのではなく、書類が届くのを待っている間に日数を使ってしまったケースです。
特に時間がかかるのが、公的年金の源泉徴収票です。通常は年始にご本人宛に送られてくるものですが、亡くなった後は相続人が請求しないと発行されないことがあり、さらに死亡の届出が済んでからでないと請求を受け付けてもらえない場合もあります。つまり、他の手続きが一段落してから取りかかると、それだけで1ヶ月近く動けない期間が生まれます。
事業や不動産の収入があった方の場合は、これに加えて帳簿・領収書の整理が必要です。減価償却の計算のために前年の申告書が要ることもあり、書類探しから始まると、さらに日数を見ておく必要があります。集める書類の全体像は相続発生後に必要な書類一覧のページでも整理しています。
5. 相続税の申告(10ヶ月)と混ざりやすい
名前が似ているため混同されがちですが、準確定申告と相続税の申告はまったく別の手続きです。そして先に来る期限は準確定申告のほうです。
| 準確定申告 | 相続税の申告 | |
| 何の税金か | 亡くなった方の所得税(消費税が必要な場合もあります) | 相続人が受け継ぐ財産にかかる相続税 |
| 誰の申告か | 亡くなった方本人の分を、相続人が代わりに提出 | 相続人自身の申告 |
| 期限 | 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内 | 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 提出先 | 亡くなった方の死亡当時の納税地の税務署 | 亡くなった方の死亡当時の住所地の税務署 |
| 必要な人 | 亡くなった方に一定の所得があった場合 | 相続財産が基礎控除を超える場合 |
相続税の申告が必要かどうかの判断は相続税の計算方法のページをご覧ください。なお、準確定申告で納めた税額は相続税の債務控除の対象になり、還付金は相続財産に含まれます。2つの手続きは別ですが、数字はつながっています。両方が必要になりそうな場合は、最初から一緒に見ておくほうが結果的に手戻りが少なくなります。
6. つまずきやすいところ
「準確定申告では使えない」=「どこでも使えない」ではありません。領収書は分けて保管しておいてください。
署名を集めるだけで数週間かかることがあります。相続人が遠方にいる場合は、この点を早い段階で確認しておいてください。
7. よくある質問
Q. 期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
A. 納める税金がある場合は、無申告加算税と延滞税がかかる可能性があります。税務署の調査を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税が軽減される取扱いがあります。延滞税の割合は年によって変わりますので、実際の金額は国税庁の延滞税の計算方法のページで最新の割合をご確認ください。なお、還付を受けるだけの申告であれば、これらは課されません。
Q. 還付だけの場合も、4ヶ月以内に出さないといけませんか?
A. 納税が発生しない還付のみの申告であれば、4ヶ月を過ぎても申告できます。ただし、還付金は相続財産に含まれるため、相続税の申告が必要なご家庭では、相続税の申告期限(10ヶ月)に間に合うように済ませておくほうが手続きがスムーズです。
Q. 相続放棄をする予定ですが、準確定申告は必要ですか?
A. 家庭裁判所で相続放棄が受理されれば、その方は最初から相続人でなかったことになるため、申告義務もありません。相続放棄を検討されている場合は、準確定申告より先に放棄の手続きをご検討ください。
Q. e-Taxで申告できますか?
A. 準確定申告もe-Taxに対応しています。ただし、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では準確定申告書を作成できないため、e-Taxソフトを使う必要があります。詳しくは国税庁の準確定申告のe-Tax対応のページをご確認ください。
Q. 準確定申告と相続税の申告を、同じ税理士に頼めますか?
A. はい。当事務所ではどちらもご相談いただけます。準確定申告の納税額は相続税の債務控除、還付金は相続財産と、2つの手続きは数字がつながっているため、まとめて見ておくほうが確認の手間が減ります。
8. 期限から逆算すると、今週やることはこれです
今週やることは、期限日をカレンダーに書き込むことと、前年の確定申告書を探すこと、そして源泉徴収票の取り寄せを始めること。この3つだけで構いません。期限が近い方も、まだ何も手をつけていない方も、まずは今どこまで分かっているかをお聞かせください。残りの日数から逆算して、どこを急ぐべきかを一緒に決めます。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、準確定申告と相続税申告の両方に対応しています。申告期限が迫っている方へのご案内もあわせてご覧ください。