相続税の申告を終えてほっとした後、通帳を整理していたら申告し忘れていた口座を見つけてしまった——このような場合、「黙っていた方がいいのでは」と考えてしまう方もいますが、実際は逆です。自主的に早く対応するほど、負担は軽くなります。

目次

1. 結論:まず今日やることは3つだけ

①気づいた時点ですぐに動く……税務署からの通知が来る前かどうかで、加算税の重さが変わります。
②当初の申告書を用意する……修正申告は当初の申告内容との差分を出す作業です。
③延滞税の分も資金として見込んでおく……追加の税額とは別にかかります。

「相続税の修正申告」とは、すでに提出した申告書の内容に漏れや誤りがあった場合に、正しい内容に訂正して再提出する手続きです。財産の申告漏れに気づいた場合、放置せず自主的に修正申告をすることが重要です。

2. 【期限つき一覧表】対応タイミングで変わる加算税率

相続税の申告漏れが発覚した場合、追加で納める税額に加えて「過少申告加算税」がかかることがありますが、対応するタイミングによって税率が大きく変わります

対応のタイミング過少申告加算税の税率
税務署からの事前通知の前に、自主的に修正申告かかりません
事前通知の後、調査による更正等を予知する前に修正申告5%(当初申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)
税務調査を受けて、指摘を受けてから修正申告10%(同様の超過部分は15%)
財産を仮装・隠蔽していた場合(重加算税)35%

反対に、そもそも申告自体をしていなかった場合の「無申告加算税」は、自主的な期限後申告なら5%ですが、調査通知後は原則10%〜、調査を受けてからでは原則15%〜と、金額に応じてさらに重くなり、仮装・隠蔽があれば重加算税40%が適用されます(税額区分により率が変わるため詳細は個別の確認が必要です・要確認)。「見つけてしまった以上、早く相談した方が結果的に負担が軽くなる」というのが、修正申告における最も大切なポイントです。

「言い出しにくい」というお気持ちはよく分かりますが、時間が経つほど不利になることはあっても有利になることはありません。特に税務調査の事前通知が来てからでは、自主的な修正申告として扱われず、加算税の軽減を受けられなくなります。

3. 修正申告と「更正の請求」の違い

似た手続きに「更正の請求」があります。修正申告は当初の申告税額が少なすぎた場合(財産の申告漏れ等)に行う手続きで、更正の請求は当初の申告税額が多すぎた場合(評価を実際より高く見積もっていた等)に、納めすぎた税金の還付を求める手続きです。財産が新たに見つかった場合は原則として修正申告、逆に評価を見直したら税額が下がりそうだという場合は更正の請求の対象にならないか、あわせて確認する価値があります(該当するかは個別の確認が必要です・要確認)。

4. 延滞税も別途かかることに注意

加算税とは別に、納付が遅れた期間に応じて「延滞税」がかかります。延滞税の割合は毎年見直され、令和8年分は納期限から2か月以内は年2.8%、2か月を超える期間は年9.1%です。修正申告で追加納付が必要な場合、この延滞税もあわせて準備しておく必要があります(延滞税の割合は毎年見直されるため、実際に納付する年の最新の割合は要確認)。

5. 修正申告が必要になる典型的なケース

1

新たな財産の発見

通帳の整理をしていて申告し忘れていた口座が見つかった、名義預金の存在に後から気づいた等のケースです。詳しくは名義預金のコラムもご覧ください。

2

財産の評価誤り

土地の評価方法(路線価方式・倍率方式の適用や補正)を誤っていたことが後から判明するケースです。

3

遺産分割協議の内容変更

当初の申告後に遺産分割協議の内容が変わり、各相続人の取得財産・税額が変わったケースです。

4

特例の適用誤り

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の要件を、実は満たしていなかった(または満たしていたのに使っていなかった)と後から判明するケースです。

6. つまずきやすいところ

相談者
実は、亡くなった父名義の口座がもう一つ見つかったんですが、金額も少ないですし、黙っていてもばれないですよね……。
江尾友宏江尾
金額の大小にかかわらず、修正申告の対象になります。「少額だから」「時間が経っているから」と放置しているうちに税務調査の対象になり、結果的に重い加算税がかかってしまうケースを何度も見てきました。今気づいた時点が、一番負担の軽いタイミングです。

修正申告は、当初の申告書と同じ税務署に、修正後の申告書を提出する形で行います。追加で納める税額がある場合は、修正申告と同時に納付します。当事務所にご依頼いただければ、当初の申告がどこの事務所であったかにかかわらず、修正申告の手続きを承ります。評価を見直したら税額が下がりそうな場合は更正の請求、新たな財産が見つかった場合は修正申告と、手続きの向きが逆であることも合わせてご確認ください。

7. よくある質問

Q. 修正申告はどこに依頼すればいいですか?

A. 当初の申告を担当した事務所でなくても、別の税理士に修正申告を依頼することは可能です。当事務所でも当初申告の内容を確認した上で対応いたします。

Q. 延滞税はいつまでの分がかかりますか?

A. 本来の納期限の翌日から、実際に納付する日までの日数に応じて計算されます。修正申告が遅くなるほど延滞税も増えるため、気づいた時点で早めに対応することが負担を抑えることにつながります。

Q. 修正申告をすると、必ず重加算税がかかりますか?

A. いいえ、重加算税は財産を意図的に隠していた(仮装・隠蔽していた)と認められる場合に課されるものです。単なる申告漏れや評価の誤りであれば、通常は過少申告加算税の対象となり、自主的な修正申告であればこれもかからない場合があります。

Q. 修正申告に期限はありますか?

A. 修正申告自体はいつでも行うことができますが、早く対応するほど加算税・延滞税の負担が軽くなります。気づいた時点でできるだけ早くご相談ください。

8. 気づいた時点で、早く動くことに損はありません

江尾友宏江尾
「今さら言い出しにくい」というお気持ちで、ご連絡をためらう方が少なくありません。ですが、加算税の税率表を見ていただければ分かる通り、気づいた時点がいつであれ、早く動くことに損はありません。むしろ早いほど負担は軽くなります。まずは何が見つかったのかだけ、気軽にお聞かせください。

すべてを整理してからご相談いただく必要はありません。まだ何も整理していない段階でお越しいただくのが、いちばんお役に立てるタイミングです。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、当初申告の担当事務所を問わず修正申告のご相談を承っています。対応できる内容はサービス・料金のページでもご案内しています。

※本記事は、記事執筆時点の税法・通達等の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。今後の税制改正等により、記載内容が変更される可能性があります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず国税庁等の最新情報をご確認いただくか、税理士等の専門家へご相談ください。