相続税の申告が終わった後、「税務調査が来るのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。書面添付制度(税理士法第33条の2に基づく制度)は、そうした不安を軽減する仕組みの一つです。この記事では、どのような制度か、どんなメリットがあるかを解説します。

目次

1. 何が心配なのか

「相続税の申告は終えたけど、税務調査が来ることもあると聞いて不安になった」という声をよくいただきます。書面添付制度は、税理士が相続税の申告書を作成する際、どのような資料を確認し、どのような判断のもとに申告内容を決めたかを記載した書面を、申告書と一緒に税務署へ提出する仕組みです。申告内容の透明性を高めることで、税務署との信頼関係を築くことを目的としています。

2. 【統計】実際にどのくらい指摘されているのか

国税庁が公表している「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によれば、実地調査が行われた9,512件のうち、申告漏れなどの非違があった件数は7,826件、非違割合は82.3%にのぼりました(詳しい内訳は相続税の税務調査で指摘されやすいポイントのコラムで解説しています)。実地調査の対象になった場合、何らかの指摘を受ける割合はかなり高いのが実情です。だからこそ、実地調査に至る前の段階で疑問点を解消できる仕組みが意味を持ちます。

3. 書面添付があると何が変わるのか

添付する書面には、財産の評価根拠、特例の適用理由、確認した資料の内容など、税理士が申告書を作成する過程で行った検討内容が具体的に記載されます。単に「問題ありません」という一言で済ませるものではなく、税理士自身が申告内容に責任を持って説明する書類という性格を持っています。

書面添付制度を利用した申告書に対して税務署が疑問点を持った場合、いきなり実地の税務調査に入るのではなく、まず税理士に対して意見を聴く機会(意見聴取)が設けられます。この意見聴取の場で税理士が疑問点に回答し、それで税務署が納得すれば、実地調査自体が行われずに済むことがあります。

意見聴取はあくまで「疑問点を確認する」機会であり、書面添付制度を使えば税務調査が絶対に来なくなるというわけではありません。ただし、実地調査に至る前に疑問点を解消できる可能性があるという点で、相続人にとっての心理的・時間的な負担を軽減する効果が期待できます。税理士が申告内容の根拠を具体的に書面で示すことで、書面添付を行った申告は、行っていない申告と比べて実地調査の対象に選ばれにくい傾向があるとされています(税務署の内部的な選定基準は公開されていないため、確実にそうなるとは言い切れません・要確認)。

4. 【自己点検】書面添付は向いているか

次のうち当てはまる項目が多いほど、書面添付制度を検討する価値があります。

1
該当したら検討の価値あり

財産の評価に土地や非上場株式など、判断の分かれる項目が含まれる

評価方法にいくつもの選択肢がある財産ほど、税務署から疑問点を持たれやすく、書面で根拠を示す意味が大きくなります。

2
該当したら検討の価値あり

小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減など、複数の特例を使う予定がある

特例の適用要件をどう判断したかを書面で示せると、税務署にとって申告内容の理解が進みやすくなります。

3
該当したら検討の価値あり

申告を依頼する税理士を、まだこれから探す段階である

書面添付は申告書作成の依頼段階から検討する必要があるため、すでに他の税理士へ依頼済みの場合は、この記事の内容が間に合わないことがあります。

5. まだ間に合うこと

書面添付制度は、申告内容の透明性を高めるための仕組みであり、すべての税理士事務所が標準的に対応しているわけではありません。税理士を選ぶ際に、書面添付制度への対応可否を確認するのも一つの判断材料になります。「書面添付があれば税務調査が絶対に来ない」という誤解だけは避けていただきたいのですが、それ以外は難しく考えすぎる必要はありません。申告書作成の依頼をこれから決める段階であれば、まだ十分に間に合います。

意見聴取の連絡が来たとしても、それ自体が「不正が疑われている」ことを意味するものではありません。担当した税理士が対応しますので、落ち着いて任せていただければ大丈夫です。

6. よくある質問

Q. 書面添付制度を利用すると、追加の費用がかかりますか?

A. 事務所によって異なります。当事務所の料金についてはサービス・料金ページをご確認ください。

Q. 意見聴取には自分(相続人)も同席する必要がありますか?

A. 意見聴取は税理士と税務署の間で行われるのが基本で、相続人本人の同席は通常求められません(個別の状況により異なる場合があるため要確認)。

Q. 自分で申告した後に、書面添付だけ後付けで依頼できますか?

A. いいえ、書面添付制度は申告書の作成過程で税理士が確認・検討した内容を記載するものです。すでに完成した申告書に後から書面だけを添付することはできません。

Q. 修正申告をする場合、書面添付は関係ありますか?

A. 修正申告についても書面添付を行うことができます。詳しくは相続税の修正申告のコラムもあわせてご覧ください。

7. この選択肢は、申告を依頼する前にしか使えません

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この制度について、申告が終わった後にお問い合わせをいただくことがあるのですが、その時点ではもうお使いいただけません。書面添付は、申告書を作る過程そのものに組み込まれる仕組みだからです。ですから、税理士を探している段階の方には、こういう選択肢があることをまず知っておいていただきたいと思っています。

依頼先を決めてからご相談いただく必要はありません。まだ何も決めていない段階でお越しいただくのが、いちばんお役に立てるタイミングです。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、書面添付制度に対応した相続税申告を承っています。対応できる内容はサービス・料金のページでもご案内しています。

※本記事は、記事執筆時点の税法・通達等の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。今後の税制改正等により、記載内容が変更される可能性があります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず国税庁等の最新情報をご確認いただくか、税理士等の専門家へご相談ください。