「先祖代々の山を相続することになったが、住んでいる場所から遠く、手入れもしたことがない」——このようなご相談は珍しくありません。評価額がいくらになるのかも分からず、まず何から考えればいいのか戸惑う方がほとんどです。

目次

1. 一般的な相続の話が、山林には当てはまらない理由

自宅や預貯金を中心にした一般的な相続の説明は、山林にはあまり当てはまりません。評価の方法自体が農地や宅地とは異なるうえ、境界や管理の状態という、税金以前の悩みが先に立つことが多いためです。まずは評価の仕組みから順に見ていきます。

2. 【山林の区分で変わる】評価の方法

相談者
山の評価額なんて、正直見当もつきません。田んぼや畑とは全然違いますよね?
江尾友宏江尾
はい、山林は農地とも宅地とも違う考え方で評価します。まず、その山林が街からどれくらい離れているか、宅地化の見込みがあるかによって「純山林」「中間山林」「市街地山林」の3つに区分され、区分ごとに評価方法が変わります。
山林の区分評価の考え方
純山林市街地から離れ宅地化の見込みが低い。固定資産税評価額に倍率をかける(倍率方式)
中間山林純山林と市街地山林の中間的な性格。倍率方式が基本だが位置づけの判定に専門的な確認が必要
市街地山林都市計画区域内等、宅地化の可能性が高い。近隣の宅地評価額から造成費相当額等を差し引く(宅地比準方式)

ご自身の山林がどの区分に該当するかは、固定資産税課税明細書や登記事項証明書、周辺の都市計画の状況などから総合的に判定します(最終的な区分の判定は個別の確認が必要です・要確認)。区分を自己判断して実際とは異なる評価額で申告してしまうと、評価額が大きくずれることがあるため注意が必要です。

3. 【指定の有無で変わる】保安林・森林経営計画の影響

相談者
そういえば父が生前、森林組合と何かやり取りしていたような気もするのですが、関係ありますか?
江尾友宏江尾
それは重要な手がかりです。「森林経営計画」の認定を受けている山林は、一定の要件のもとで評価額が減額される仕組みがあります。当事務所のご相談でもまだ知らない方が多い制度ですので、まずは被相続人の資料が残っていないか確認してみる価値があります。
状態評価への影響
保安林に指定されている伐採・開発に制限がかかるため、通常の山林より評価額が下がることがある(制限の程度により減額幅は異なる・要確認)
森林経営計画の認定を受けている一定の要件のもとで評価額が減額される場合がある(要確認)
どちらの指定・認定もない区分に応じた通常の評価方法(前章の表)で評価する

相続する山林に保安林指定があるかどうかは、登記情報や市町村の森林担当窓口への確認で分かります。指定・認定の有無を確認せず通常の評価額のまま申告してしまうと、本来使えたはずの評価減を使わずに申告してしまうことになります。

4. 相続登記の義務化と、山林ならではのもう一つの届出

不動産全般に共通する話として、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になり得ます。山林についてはこれに加えて、森林の土地の所有者になったことを市町村へ届け出る制度があり、相続による取得もその対象に含まれます。届出の期限や過料の有無は個別の確認が必要ですが(要確認)、「不動産だから相続登記さえしておけば大丈夫」と思い込まず、山林特有の届出が別にないか、市町村の森林担当窓口に確認しておくことをお勧めします。

山林の相続でよく直面するのが、「そもそも境界がどこなのか分からない」「先代の代からずっと手入れされていない」という問題です。評価額や税金の話以前に、この管理放棄の問題が解決の糸口を見えにくくしているケースが少なくありません。市町村の森林担当窓口や都道府県で森林簿・森林GISを確認すれば、地番ごとの森林の状況(面積・樹種等)が分かる場合があります。境界不明・管理放棄の状態は申告期限(10か月)内にすべて解決できるとは限らないため、まずは評価と申告を進めながら、並行して今後の方針を検討することも可能です。

5. 管理できない山林の選択肢

相続した山林を自分で管理するのが難しい場合、いくつかの選択肢があります。

選択肢概要注意点
森林経営管理制度市町村に相談し、森林の経営を市町村や林業経営者に委ねる仕組み対象になるかは山林の状況による(要確認)
相続土地国庫帰属制度一定の要件を満たせば、不要な土地を国に引き取ってもらえる制度要件が細かく、境界確定等の準備が必要な場合がある(要確認)
売却・寄付近隣の所有者や森林組合等へ売却・寄付する方法需要は地域差が大きく、必ず買い手が見つかるとは限らない

いずれの制度も要件が細かく定められているため、対象になるかどうかは個別の確認が必要です(要確認)。なお、「山林だけいらないから放棄したい」と考える方が多いのですが、相続放棄は財産の一部だけを選ぶことができず、預貯金等の他の財産も含めて全て放棄することになります。山林を含む相続財産は、評価だけでなく「今後どうするか」まで考える必要があります。

6. よくある質問

Q. 山林の評価額はどうやって調べればいいですか?

A. 登記事項証明書と固定資産税課税明細書があれば、評価区分の見当をつけることができます。保安林指定の有無は市町村の森林担当窓口でも確認できます。まずはお手元の書類だけでもご相談ください。

Q. 境界が分からない山林でも相続税の申告はできますか?

A. はい、境界が未確定のままでも登記情報や公的な資料をもとに評価・申告を進めることは可能です。境界確定は売却や活用を検討する段階で必要になることが多く、申告と切り離して進めることができます。

Q. 森林経営計画に入っているかどうかは、どうすれば分かりますか?

A. 被相続人が生前に市町村や森林組合とやり取りした書類が残っていないか確認するほか、市町村の森林担当窓口に相続人であることを伝えて問い合わせる方法があります。

Q. 岐阜県は山林が多いと聞きますが、何か特有の注意点はありますか?

A. 岐阜県は県土に占める森林の割合が高い地域です。山林を相続財産に含む方が多い一方で、評価区分や保安林指定の状況は一筆ごとに異なるため、地域全体の傾向だけで判断せず、対象の山林ごとに確認することをお勧めします。

7. 境界や管理の悩みも、評価と切り離して整理できます

江尾友宏江尾
「境界も分からないし手入れもできていないので、相談していいのか迷った」というお声をよくいただきます。ですが評価と申告は、境界確定や今後の管理方針が決まっていなくても進められます。まずは分かる範囲の書類だけお持ちいただき、評価を先に済ませてしまうことをお勧めしています。今後どうするかは、そのあとゆっくり考えても間に合います。

方針を決めてからご相談いただく必要はありません。まだ何も決まっていない段階でお越しいただくのが、いちばんお役に立てるタイミングです。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、山林を含む相続財産の評価・申告を承っています。対応できる内容はサービス・料金のページでもご案内しています。

※本記事は、記事執筆時点の税法・通達等の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。今後の税制改正等により、記載内容が変更される可能性があります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず国税庁等の最新情報をご確認いただくか、税理士等の専門家へご相談ください。