「実家を相続したけれど、誰も住む予定がなく空き家のまま」——こうしたケースは珍しくありません。空き家のまま放置すると管理の手間や固定資産税の負担が続きますが、売却を検討する際に知っておきたいのが、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。

目次

1. この特例、いくらぐらいの節税になるのか

正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といい、相続で取得した実家を売却した際、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。売却額や取得費によって幅はありますが、後述の計算例のように税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。まずは大まかな計算の仕組みから見ていきます。

2. 計算の仕組み

譲渡所得税は、次の式で計算した「譲渡所得」に税率をかけて求めます。

譲渡所得 = 売却額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除額

取得費(実家を購入・建築した当時の金額)が分からない場合は、売却額の5%を概算取得費として計算するのが一般的です。譲渡費用には仲介手数料等が含まれます。相続で取得した不動産は、被相続人の取得時期を引き継ぐため、多くの場合「長期譲渡所得」(所有期間5年超)に該当し、税率は所得税・復興特別所得税・住民税をあわせて20.315%です。この式の「特別控除額」に、要件を満たせば最大3,000万円をあてはめられるのが本特例です。

3. 【計算例】売却額4,000万円のケースを最後まで追う

実家を4,000万円で売却し、取得費が不明なため概算取得費(売却額の5%)を使い、譲渡費用(仲介手数料等)が130万円、相続人1人で特例の要件を満たしているケースを想定します(実際の税額は取得費の有無・相続人の人数等によって変わる概算の一例です)。

段階内容金額
売却額4,000万円
概算取得費(売却額の5%)▲200万円
譲渡費用(仲介手数料等)▲130万円
特別控除(相続人1人・要件を満たす場合)▲3,000万円
課税譲渡所得670万円
譲渡所得税・住民税(20.315%)約136万円

この試算例では、特例を使わなかった場合(①〜③のみで計算)の税額は約746万円になるところ、特例を使うことで約136万円まで下がります。差額は約610万円です。もちろんこれは一例であり、取得費が分かっている場合や、相続人が3人以上で1人あたりの控除額が2,000万円になる場合は、結果が変わります。

4. 【グラフ】特例あり・なしでどれだけ変わるか

売却額4,000万円のケースの譲渡所得税・住民税額(設例)
特例なし約746万円
特例あり(相続人1人・3,000万円控除)約136万円
※設例(売却額4,000万円・概算取得費200万円・譲渡費用130万円・税率20.315%)に基づく概算。実際の金額は取得費・相続人の人数・売却額によって異なります。

5. 自分で計算するときに間違えやすいところ

1

3年の期限を意識せず、空き家のまま放置してしまう

この特例は、相続開始があった日から3年を経過する年の12月31日までに売却することが要件です。「そのうち売ればいい」と後回しにしているうちに期限を過ぎ、特例が使えなくなることがあります。適用期限も時限措置で、現時点では令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です(要確認)。

2

相続人が3人以上のケースで、1人あたり3,000万円のまま試算してしまう

2024年1月1日以後の譲渡からは、相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額が2,000万円に引き下げられています。相続人が1人または2人の場合は、引き続き1人あたり最大3,000万円です。古い情報のまま試算すると税額を見誤ります。

3

相続税の申告と譲渡所得税の申告を混同してしまう

この特例は譲渡所得税(売却時にかかる税金)の特例で、相続税とは別の制度です。相続税の申告が終わったからといって、売却時の譲渡所得税の申告義務がなくなるわけではなく、売却した年の翌年に改めて確定申告が必要です。

6. よくある質問

Q. 空き家を取り壊してから売っても特例は使えますか?

A. はい、家屋を取り壊して更地として売却する場合も対象になります。要件の詳細は個別にご確認ください。

Q. 実家を賃貸に出していた期間があっても使えますか?

A. 相続開始の直前まで被相続人が一人で住んでいたことが要件のため、賃貸に出していた期間があると要件を満たさない可能性があります(要確認)。

Q. 小規模宅地等の特例と併用できますか?

A. 小規模宅地等の特例は相続税、この特例は譲渡所得税の制度で、対象となる税目が異なります。要件を満たせばそれぞれ別に適用を受けられる場合がありますが、詳しくは小規模宅地等の特例のコラムもあわせてご確認ください。

Q. 相続人同士で共有のまま売却する場合と、単独名義にしてから売却する場合で違いはありますか?

A. 共有のまま売却する場合、要件を満たす相続人それぞれが控除を受けられます(2024年以降は3人以上で1人2,000万円)。名義の持ち方によって手続きが変わるため、事前の検討をお勧めします。

7. 取得費が分かるかどうかで、結論は大きく変わります

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この試算で一番結果を左右するのは、実は特別控除の3,000万円ではなく取得費です。購入当時の契約書や領収書が見つかれば、概算取得費(売却額の5%)よりずっと有利な金額で計算できることがあります。ご相談いただいたら、まず古い書類が残っていないかを一緒に確認するところから始めています。それだけで試算の結果が大きく変わることがあるためです。

試算をしてからご相談いただく必要はありません。まだ何も計算していない段階でお越しいただくのが、いちばんお役に立てるタイミングです。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、空き家の売却に関するご相談を承っています。対応できる内容はサービス・料金のページでもご案内しています。

※本記事は、記事執筆時点の税法・通達等の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。今後の税制改正等により、記載内容が変更される可能性があります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず国税庁等の最新情報をご確認いただくか、税理士等の専門家へご相談ください。