役所の窓口で「出生から死亡までの戸籍が全部必要です」と言われ、途方に暮れた経験はありませんか。特に本籍地を何度か移している場合、複数の役所に請求する必要があり、想像以上に時間がかかります。

目次

1. 結論:まず今日やることは3つだけ

①死亡時の戸籍謄本をまず取得する……ここが出生まで遡る出発点になります。
②広域交付が使えるか確認する……本人が窓口に行ければ、直系の戸籍は最寄りの役場でまとめて取れます。
③対象外の戸籍は郵送請求の準備を始める……兄弟姉妹の戸籍等は従来どおり本籍地への郵送請求が必要です。

相続の手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。これは、法定相続人を正確に確定するためです。転籍・婚姻・離婚などで戸籍が作り替えられるたびに、以前の戸籍に記載されていた情報(認知した子、前婚の子など)が新しい戸籍に引き継がれないことがあり、出生からの戸籍を追わないと、把握していない相続人の存在を見落とすリスクがあります。

2. 【手順表】出生まで遡るまでの流れ

手順内容期間目安
死亡時の本籍地で戸籍謄本を取得する即日〜数日
広域交付が使えるか確認し、使えるなら最寄りの窓口でまとめて請求する即日(窓口に本人が出向く場合)
広域交付の対象外(兄弟姉妹の戸籍等)は、本籍地の役場へ郵送請求する1〜2週間程度/件
届いた戸籍を確認し、さらに遡る本籍地があれば③を繰り返す全体で数週間〜1か月程度

本籍地を何度も移している場合や、代理人が請求する場合は、②の広域交付が使えず③から始めることになります。次の章から、それぞれの手順を詳しく見ていきます。

3. 戸籍・除籍・改製原戸籍の違い

相続の書類収集で出てくる「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」は、それぞれ意味が異なります。

1

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

現在も効力のある戸籍の写しです。被相続人が最後に在籍していた戸籍がこれにあたります。

2

除籍謄本

婚姻・死亡・転籍などで、その戸籍に記載された全員がいなくなった(除籍になった)場合の謄本です。被相続人が過去に在籍していた戸籍の多くはこの形で残っています。

3

改製原戸籍

法改正によって様式が書き換えられる前の戸籍です(紙の戸籍からコンピュータ化された戸籍への切り替え等)。切り替えの際に一部の情報が新しい戸籍に引き継がれないことがあるため、相続では改製前の原本も確認する必要があります。

4. 広域交付制度でできること・できないこと

2024年3月1日から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地が遠方であっても、最寄りの市区町村窓口でまとめて戸籍を請求できるようになりました。相続の戸籍収集の負担を大きく減らす制度ですが、対象範囲には制限があります。

広域交付でできること広域交付でできないこと
対象となる戸籍請求者本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母等)・直系卑属(子・孫等)の戸籍兄弟姉妹・おじおば等、傍系親族の戸籍は対象外
請求できる人本人が窓口に直接出向く場合代理人による請求、郵送による請求はできない

兄弟姉妹が相続人になるケース(お子さんがいない方の相続等)では、広域交付だけでは戸籍が揃わず、別途本籍地への請求が必要になる点に注意が必要です(詳細な取扱いは要確認)。

5. 郵送請求の具体的な手順

広域交付の対象外の戸籍や、窓口に出向く時間が取れない場合は、郵送請求を使います。基本的な流れは次のとおりです。

1

本籍地の役場に必要書類を確認する

請求書の様式や必要な手数料は役場ごとに案内が異なるため、事前に役場のサイトまたは電話で確認します。

2

交付請求書に記入する

役場のサイトからダウンロードするか、手書きで作成します。「相続手続きに使う」旨と、請求者との続柄を明記します。

3

本人確認書類・返信用封筒・手数料を同封する

本人確認書類のコピー、切手を貼り宛名を記入した返信用封筒、手数料分の定額小為替(ゆうちょ銀行・郵便局で購入可能)を同封して郵送します。

郵送請求は、定額小為替の金額不足・返信用封筒の切手貼り忘れなど、細かい記入漏れで手続きがやり直しになることがあります。慣れない作業を何度も繰り返すのが負担な場合は、代行のご利用もご検討ください。

6. つまずきやすいところ

相談者
本籍地が県外なうえに何度も転籍していて、これから何か所に請求すればいいのか見当もつきません。もう心が折れそうです。
江尾友宏江尾
お気持ちはよく分かります。転籍が多い方は、最初に取れた戸籍を見ないと次にどこへ請求すべきかも分かりません。一つずつ順番に遡っていけば必ず終わりますので、まずは今お手元にある戸籍だけ見せていただけますか。

広域交付ですべて揃うと思い込んでいると、兄弟姉妹が相続人になるケースで戸籍が不足したまま手続きを進めてしまうことがあります。また、最初に取得した戸籍だけで「出生から死亡まで揃った」と思い込み、実際には転籍前のさらに古い戸籍が必要だったと後から気づくケースも少なくありません。「平日に何度も役所に行く時間がない」という方のために、当事務所では取得代行サービスもご用意しています。

7. よくある質問

Q. 戸籍謄本はどれくらいの通数が必要になりますか?

A. 被相続人の本籍地の変遷回数や、相続人の人数によって異なります。転籍が多いほど取り寄せる戸籍の通数も増える傾向があります。まずは分かる範囲の本籍地情報だけでもご相談ください。

Q. 郵送請求にはどれくらい時間がかかりますか?

A. 役所や時期によって異なりますが、1〜2週間程度かかることが一般的です。複数の役所にまたがる場合は、順番に請求する必要があるためさらに時間がかかります。早めの着手をお勧めします。

Q. 代理人が広域交付の窓口へ行って請求できますか?

A. いいえ、広域交付は請求する本人が窓口に直接出向く必要があり、代理人による請求はできません。代理人が動く場合や窓口に行く時間が取れない場合は、従来どおりの郵送請求や専門家への代行依頼をご検討ください。

Q. 法定相続情報一覧図を取得しておくメリットは何ですか?

A. 戸籍謄本一式をもとに法務局の認証を受けると、以後の相続手続きでは戸籍謄本一式の原本の代わりに一覧図の写し1枚で済むようになります。資料収集についてはこちらのページも参考にしてください。

8. 「これで全部揃った」を、一度こちらで確認させてください

江尾友宏江尾
戸籍を集め終えた方から「これで全部揃いました」とご連絡をいただくことがよくあるのですが、実際に拝見すると転籍前の戸籍が抜けていることがあります。ご自身では分からなくて当然です。届いた戸籍を一度こちらで確認させていただき、次にどこへ請求すべきかを判断するところまでお付き合いしています。

戸籍が全部揃ってからご相談いただく必要はありません。まだ何も揃っていない段階でお越しいただくのが、いちばんお役に立てるタイミングです。当事務所は岐阜県瑞穂市を拠点に、戸籍収集の代行から相続税申告までご相談を承っています。対応できる内容はサービス・料金のページでもご案内しています。

※本記事は、記事執筆時点の税法・通達等の情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成しています。今後の税制改正等により、記載内容が変更される可能性があります。実際の申告・手続きにあたっては、必ず国税庁等の最新情報をご確認いただくか、税理士等の専門家へご相談ください。